ジャンクメタル・シリーズ
S/N 01
A Farewell to Germs「フェアウェル トゥ ジャームズ」
<はなださとしのコメント>
1996年の暮れにペルーのリマで起きたMRTA(トゥパク・アマル革命運動)による「日本大使公邸占拠事件」。解決までに4ヶ月以上を要した事件ではあったが、自分自身にとにかく強烈なインパクトを与えた事は事実だ。ステリル(内分泌撹乱物質の影響により生殖能力を失った者達)による地下レセプション会場の占拠は、この事件を下敷きにした。そして作品の幕引きも、実際の事件同様に悲痛なものとなっている。MRTAにとっても、ペルー国民にとっても、人類全体にとっても、悲劇としか言いようのないこの事件を、この作品を書くことで自分なりに整理しておきたかったのだ……ってことを、今さらながら思い出した。
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S/N 02
STERILE「ステリル/地下都市の発生学」
<はなださとしのコメント>
1998年に完成した台本である。ってーことは10年以上も前ってこと? 流石に若干の「古臭さ」と、作風というかストーリー展開に「青臭さ」を感じる力作である(若かったなぁ…)。原発事故の描写に関しては、米国スリーマイルの事故を下敷きにして書かれたものであるが、FUKUSHIMA以後の今なら、もっとリアルに、且つエグく描写されるんだろうね。とは言うものの、試験操作盤からのECCS起動への展開はスピード感があって今なお素敵だと思うが、どうだろう? 前作『A Farewell to Germs』で生き残った者達の運命や如何に…って話なんだけど、「生き残る」って事は「死に忘れた」って事と同じなの?と、声を大にして問いたいよ、あの頃の自分自身に!
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S/N 03
老いたる時間 -A true daughter of Old Time-
<はなださとしのコメント>
1996年の初演の台本。Bö-tanz史上最も上演回数の多い作品である。ある意味、マスターピースってわけ。前世紀の作品なので確かに古くさくはある。しかし、これはやはり面白い。博士論文執筆時にこの作品のアイディアを思いつき、早く脚本を書きたくて、博士論文をいい加減に2週間で終わらせてしまったという、「人生を投げ打った」とも言える脚本である。
なお、作品中に登場する「大きなりんごの木」のお話は、シェル・シルヴァスタインの絵本「おおききな木[The giving tree]」である。当時講師をしていた塾にあった中学英語の教科書中でそれを見つけ、読んで落涙してしまったのだ……こう見えて、結構ピュアなハートの持ち主なのだ、俺。
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S/N 04
from Under the Junk Metal -the 2nd ed.-
<はなださとしのコメント>
ジャンクメタル・シリーズの最終章です。暗く陰鬱な話ばかり続いたシリーズの最後には、こんな素敵な幕切れ——いや、幕開け?——があったのです。これぞ、地下都市の終焉——そして、新しい旅立ち——なんだと思います。イジドール・デュカス(ロートレアモン)の「マルドロールの歌」から引用した『思い出は現実より苦い…』とのアフォリズムが示すように、後日談のみで構成された(「思い出」で構成された…って感じかな?)様な作品ですが、とにかく大好きな作品です。でも、その真価が発揮されるのは、この四部作を連続で読み切った時だと思います。時間はかかりますが、通して読んでみてください。暇だったらね(ノ゜◇゜)ノ
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